冬と朝と雨

朝から雨が降っている。パラパラと、心地良い雨だ。雨で塵が洗い流された空気は清々しく、少し冷たいのが心地良い。

ベランダで佇み、目の前を横切っている道路をはしる車や道行く人なんかをなんとなく見ていた。
一人の男が視界の左端から現れた。黒いスーツと、光沢のある革靴、中に着ているシャツとネクタイは紺色で、メガネは色が入っていた気がする。背筋はピンと伸ばされ、視線の先は前方の一点に固定され、早歩きで進むその姿からは、なんとなく普通のリーマンとは違う、殺気と言えばいいのか、そんな雰囲気が感じられた。
多分、その手の人だなと思った。

風俗街が近いので、その手の人はたまに見るが、朝っぱらから見るのは初めてだった。
朝の清々しい雰囲気と、夜の風俗街が似合う怖い人のミスマッチが、なんだか面白いなと思った。
怖い人は何処かへと向かっていった。 何処へ行くのだろう、これから何をするんだろう、と思った。 朝の街を観るのは面白い。街の人達の、それぞれの一日が始まるのがわかる。 道路の向こうに見える中学校の廊下の蛍光灯が点くのが見えた。